卒業式当日、遂に継人は式に顔を出さなかった。
真央と二人で三人で良く馬鹿をしていた屋上へと向かった。
錆びた屋上のドアノブのザラっとした感触さえ今日が最後だと思うと少し切なかった。
ドアを空けると、ソファーに継人が一人煙草を吸いながら座っていた。
「来てくれたんだ!」
式の最中もずっと継人の心配をしていた僕は、声を上げて喜んだ。
「あぁ…」
継人は、昨日と同じ冷たい目をしていた。
「よっ!甘えん坊の継人ちゃん来たのね。」
「ちょい真央っ!」
まるで継人を挑発する様な言葉を発した真央を諌めた。
けど継人の今までの行動が気に食わなかった真央は、さらに挑発を続ける。
「大しゅきだった美咲ちゃんがいなくなって淋しいですね。」
継人は、すっと立ち上がり、ドアの近くの僕達の側まで距離を詰める。
「喧嘩売ってんの?」
「いや。ただ大切なおもちゃを取り上げられて駄々をこねて暴れ回ってる継人君がムカつくだけだよ。」
「はぁ?」
「お前の八つ当たりで何人の奴傷つけた?何人の女泣かした?」
「一々弱い奴も尻の軽い女の数も数えるかよ。」
二人とも今にも殴りあいを始めそうな勢いだ。
「もうやめてよ!真央も継人も!今日が最後だよ!」
僕は二人の間に割って入った。
「キンヤ黙っとけ!この甘えん坊のだだっ子継人ちゃんには、俺がお灸すえてやるから…」
今にも継人を殴り飛ばしそうな真央を必死で抑えようと思った瞬間耳の横をシュッと何かが凄いスピードでかすった音がした。
そして次の瞬間喉を押さえながら大きな身体が目の前で倒れた。
「これでお喋り好きの真央も黙るだろ。」
そう言って立ちつくす僕の横を継人は、通り過ぎて行く。
「ゴホっゴホっいきなり喉狙うとか流石じゃん。」
真央は喉を押さえながら立ち上がる。
「相変わらず化け物じめてんな。」
継人は何が可笑しいのか冷たい笑みを浮かべている。