継人さんのお店でバイトを始めて気付けば2年近く経っていた。
この2年、色んな事があった…
美紀さんの働いてるブランドの地方紙向けのモデルを始めた。
そのおかげで憧れのブランドの洋服を格安で買える様になった♪
次にマリーさんのカットモデルをする事によって美容室代が浮いた♪
って二つ供お金に関わる事で自分の前世は商人かも知れないと思う日もあるし…
継人さんは、
「お前単純だから扱いやすくて二人に利用されてるだけじゃないかな?」
とか馬鹿にされた。
そんな継人さんとは、特に進展もない。
あの夜以来、美咲さんの名前が継人さんの口から出る事は無かったし。
相変わらず女にはだらしなくて1ヶ月に三人ぐらいは、継人さんに逢いに思い詰めた表情をした女性がお店に訪ねて来るが、そんな時に限って継人さんは必ずお店をさぼる。
おかげで私は、何人もの女性の愚痴に付き合わされて来た。
たまに、あの人は予知能力でもあるんじゃないかと思えて仕方ない。
そしてその予知能力者と言えば、朝から実家のあるS市に帰郷中だ。
もうすぐ日が暮れるがまだ帰って来ない…
掃除を終えた私は、お店のカウンターに一人で座って自分で煎れたコーヒーを飲んで一息ついていた。小さな店内にドアが開く音が響く。
継人さんが、帰って来たかなと思って振り向くとキンヤさんと初めて見る大きな男の人が立っていた。
「笑美花ちゅわーん♪」
相変わらず年齢に不相応な愛くるしさを放ちながらキンヤさんは私の側に駆け寄る。
大きな男性は、よく見ると腕はタトゥーだらけでそのタトゥーは首まであって目は鋭く、明らかに人一人殺してます。的な危ないオーラを放ち私を見ている。というか、睨んでる?
「へぇ~っ確かに似てるかも。」
「真央!笑美花ちゃんびっくりして固まってるって!」
「あっ?悪い悪い。あまりにも似てたもんでつい見つめてしまって…」
「いやいやお前のは、見つめるじゃなくて睨むだから…お前に睨まれたら誰だってビビるよ。」
「あぁ~っ俺目付き悪いしな。」
「いや目付きと言うか全てだよね。パット見どっから見てもヤカラにしか見えないよ。まぁ百歩譲って格闘家かな?」
「アホっ!どっから見ても今売り出し中の若手天才トライバルArtistじゃんねぇ?」
と真央と呼ばれる男性は私に同意を求めて来た。
二人のやり取りがまるで息ピッタリのお笑い芸人みたいで可笑しくて私は、緊張していた自分を忘れて笑ってしまった。