ディスプレイを見ると公衆電話からだった。
この携帯が普及したご時世に公衆電話?
と思ったが取りあえず電話に出る事にした。
「もしもし…」
携帯越しにさっきまで妄想していた愛くるしい彼女の声が聴こえた。
「もしもし。どうした?」
「うーんちょっとお願いがあって。」
「ふーん何?」
「あのさ、入院伸びたんだよね…」
「はぁ?」
彼女の言葉にすかさず反応した。
「ねぇ…人の話しは最後まで聞いて!」
さっきまで頬っぺた膨らませてた少女のイメージをかき消すくらい落ち着いたトーンで話す美咲。
「解った。」
「でさ明日からお見舞い来ないで欲しいの。」
「はぁ?!何で?」
美咲の入院が伸びた事に対してと意味が解らない美咲のお願いに対しての感情が相乗して大きな声を出した。
「ははっやっぱり怒った?」
美咲は、そんな俺の大きな声を聞いて笑いながら明るい声を出す。
「普通怒るだろ?訳聞かせろよ!」
俺の声からまだ怒りの色は消えない。
「何かさ継人の記憶に私が病院にいる時のイメージが染み込みそうで嫌だからかな?」
「はぁ???」
「継人は、私の笑ってる姿が一番好きでしょ?私も継人の隣で笑ってる自分が好きなの。だからかな?」
美咲は、大切な話しをする時普段よりもゆっくりとした口調で話す。そんな美咲だから今彼女が話した意味の解らない申し出も俺には受け入れてやる事しか出来ないかもしれない。
「解った…」
「ありがとう。」
俺の短い返事に電話の向こうで笑顔でお礼を言っている美咲の姿が目に浮かんだ。
「まっ寂しがり屋のお前は大丈夫なの?」
いつもの調子でおどけてさっきまでの重たい空気を払拭しようとしたが、携帯から美咲の返事が帰って来ない。
「おいっ!大丈夫かよ?」
慌てて携帯の向こうの美咲に呼び掛けた。
「寂しいよ…」
今までと違って今にも消えてしまいそうな美咲の返事が帰って来る。
そして、哀しく小さな音が携帯から流れて来る。
その音は、過去一回だけ俺は聴いた事があった。
その時の美咲は、泣いていた…
「美咲…泣いてるのか?大丈夫かよ?」
泣いてる彼女の隣にいない今の自分に何が出来る訳でもなくただ携帯を強く握りしめ呼び掛けた。