「大丈夫です。」
こぼれそうな涙を堪えた。
キンヤさんは、私の反応に驚いてるようだ。
「本当に悲しいのは、継人さんだし。私は、大丈夫です。」
精一杯の声で自分の涙を堪える様子を見て、
「そうだね…恵美花ちゃんは逞しいね。」
キンヤさんは、いつもの優しい笑みを私に向けてくれた。
そして、
「継人の事好きになったんでしょ?」
悪魔の笑みを浮かべながら私を見ている。
「えっ!?何で?」
急なキンヤさんの言葉に私は、戸惑った。
「そんな感じがしただけ。まっ今晩の事は二人だけの秘密だね♪」
まだ悪魔の笑みを浮かべるキンヤさん。
「はいっ…秘密です。」
まるで弱みを握られたようで弱気に答えた。
「でどうすんの?継人は手強いよ。女にモテるし、しかもだらしない。それに不器用だし。美咲ちゃんの件以来あいつはあいつなりにもがいてるよ。」
キンヤさんは、他人事の様に(って他人事ですけど…)淡々と話した。
私は、少し考えたが特にこれと言って継人さんを振り向かせる方法が浮かばなかったので
「どうもしません。」
笑顔で答えた。
だってこれと言って何も浮かばなかったし、本当笑うしかない状況だと思ったからだ。
キンヤさんは、私の潔い返事と笑顔に驚いたのか、口にしかけたウィスキーが入ったグラスを一旦カウンターの上に戻した。
「何か意外だなぁ。笑美花ちゃんここ数ヶ月で少しだけど大人になったのかな?」
私の顔を覗き込む。
キンヤさん、の言う「大人」がどんなものか解らないが、1つだけ自分の中で変わった事がある。
それは、初めて人を好きになった事。
そう恋した事だ。
始めは、継人さんの全てを否定して拒んでいた。
けど一回ちゃんと向き合って継人さんの事を知ると、もっと継人さんの事を知りたいと言う気持ちが止まらない。
そして、その一つ一つを受け止めて行く度に、自分の心の中の継人さんの存在が大きくなっていく。
そして、その気持ちは、私自身なんだと思う。
だから継人さんの事をちゃんと受け止めた分、私の心の大きさも変化し大きくなったのかもしれない。
「まっそうかもしれませんね。」
覗き込むキンヤさんの目を見つめ私は笑った。