私は、神代 花音(クマシロ カノン)。



今、私は路上で歌ってる。



歌っている瞬間は楽しい。



前まではあまり人が集まらなかったけど、今は沢山の人が私の歌を聞いてくれている。



バイト帰りの学生。



帰宅途中のサラリーマン。



エプロン姿の男性。



赤ちゃんをだっこしている女性。



私の歌を様々な人が聞いてくれている。



素直に嬉しい。



これが最後のステージになる。



だから私は精一杯気持ちを込めて歌う。



1曲、2曲と曲が終わっていき遂に最後の曲になった。



だいたいここにいる人達とは顔見知りな人が多い。



いつも聞いてくれたり中には話しかけてくれたりする人達ばかりだから。



でも、今日は初めて見る人が私の歌を聞いてくれている。



目立たなさそうな私服に、眼鏡とマスクをつけてさらに帽子をかぶっている。



どうみても怪しい格好だけど大丈夫かな?



それでも気にせず全ての曲を歌い終わった。



パチパチパチ



聞いてくれてた人が拍手をくれる。



「聴いてくださりありがとうございました。」



私が言った。



「頑張ってね」



「応援してるよ」



という言葉をかけてほとんどの人が帰って行く。



そして私は怪しげな格好の人に声を掛けられた。



「綺麗な歌声だね。」



聞き覚えのある声だった。



誰の声だか思い出せないけど、でも間違いなく知ってる人の声だった。



その人はそれだけ言って帰ってしまった。



何だったんだろう?



取り敢えず家に帰る。



「ただいま〜」



「おかえりなさい〜」



私は、ママとパパと3人で暮してる。



兄弟はいない。



「花音?明日の準備出来た?」



「うん出来たよ〜」



「じゃあご飯にしちゃいましょ〜」



いつもどうりに時が進んでく。



私にとってこのいつもどうりの時間も今日が最後。



✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼



次の日、私はとあるところに来ていた。



「神代花音さん〜3番診察室に来てください〜」



そう、私が来ているところは病院。



小さな頃から心臓病を持っていて今日から治療の為に入院することになった。



診察室に入るといつものおじさん先生では無かった。



胸元の名札を見ると會谷修司(アイタニ シュウジ)と書いてある。



間違いなく私のタイプでは無いけどイケメンであることには変わり無い。



ただまぁ怖い。



なんか雰囲気?見た目?なんだか怖い。



「今日から新しく花音ちゃんの担当医になった會谷です。よろしくね。」



声を聞いたらそんなに怖くなさそう。



その後先生と少し話して病室に向かった。



病室にはママが白衣姿で待ってた。



私のママはこの病院で内科医として働いている。



ついでにパパもここの病院でママと同じく内科医として働いてる。



つまり両親が医者。



「なんで担当医変わったの?」



気になったことを聞いてみた。



「……前の先生もうだいぶ前から癌でね……昨日倒れたわ……あとどのくらいもつか分からない……」



「そうなんだ……」



なんだか不思議。



私もあとどのくらい生きられるのか分からないけど、余命はとっくに過ぎてるんだ。



ママとパパは必死に隠してたけど知ってた。



私は15歳まで生きられないって言われてた。



2年も長く生きてる。



そう考えると幸せなのかもしれない。



ママとちょっとだけお話してからお昼寝をした。



最近は歌うために外に出歩くことが多くなったから体力がついてきたって思ったけど、