「あれだろ、平凡にて非凡で来羽の弟子。
あの変人電波な来羽さんの弟子だから相当変人らしい─ってうちの屋敷のやつらが言ってた」
『……暇なの、君のうちの人たちは?』
「たぶん。麻央(まお)だけは忙しくしてるけど」
『そう……。まあ、平凡にて非凡ってのはあってるけど、変人ではないかなぁ……? 逆に苦労人?』
「あーまあそうか。来羽さんの弟子だから逆にしっかりするか。まあ、それは置いといて、一応見たことあるぞ、そのーサカキクオンくん?」
『榊原久遠。本当に? どうやって判断したの? 本当に特徴ない顔してるけど?』
「えっとーなんだっけ、来羽さんと本家行ったときに来羽さんに、『あれボクの弟子ー』っていわれた覚えがある……」
『ああ、じゃあ間違いないかもね。
で、その久遠が今行ってるの、私立和聖学園で依頼内容は転校生の始末なんだけど、いい?』
「あーわかった。じゃあ、手続きはそっちでよろしく」
『勿論。あとはまあ、詳細はメールで送るわ。──あと』
「……あ」
『? どうした?』
ふと、足を止めた彼の目の前には、ガタイのいい男が3人。
いつの間にか周りには人がいなく、人目のない場所に来てしまったようだ。
真ん中に立つ男が、無言で殴りかかる。
「いや、別に。で?」
素早くしゃがんで避けた少年は、そのまま男の腕をもち、その流れで掴んで投げる。
壁に当たった男は暫く動けないだろう。
『ああ。寮に入って貰うけど、それは久遠と同室だから』
怒りに任せ、2人目、3人目が突っ込んでくる。
殴りかかる2人目の拳を後ろにそってよけ、そのままの流れで片手でバック転をする。その足で2人目の男の顎を蹴った。
「あーりょうかいっと」
そして体当たりしようと突っ込んでくる3人目の懐に入ると、足で3人目の腹を蹴る。
痛みに呻き地面に伏せる男を見下しながら耳と肩の間にスマホを挟み、パンパン、と両手を払う。
『そいつら、どこの子?』
音で察したのか、電話口の男が問いかける。
少年は無言で1人目の男に近寄ると、がっ、と頭に足を置いた。
うがっ、と痛みに呻く1人目にお構い無しに問いかける。
「おまえ、どこのやつ?」
「だれがっいうかっ!」
足に力をいれ、グリグリと1人目の頭を地面に擦りつけるようにすると1人目は叫んだ。
「待田組だっ……!!! 組長の命令でまずは幹部の松井未央(まついみお)を倒せと!!!」
「らしいぞ」
そう、電話口の男にいうと、電話口の男はははっと笑った。
『待田ね。なるほど。では言ってあげな。人間違いですよーって』
声が聞こえたのか、男らはサーッと顔を青くさせた。



