それいけ!深黒 寧!




────時は少し過ぎ。


ここは、繁華街である。時刻は9時半。
昼間はほのぼのと賑わう繁華街だが、夜になると、夜の顔を覗かせる。

露出の多い服を着た女。髪をワックスでガチガチに固め、派手なスーツを着た男。ガタイのいい強面の男。

まわりには、そんな人たちばかりである。

そのなかに、一際目立つ容姿の少年がいた。


金髪碧眼で肌は白く、少女のように華奢だ。
その整った顔立ちは美しい。
その美少年とすれ違うもの全て、振り返る。

なかには、顔を赤く染めるものまで。

華やかな気分になる周りとは反比例し、少年は不機嫌であった。


「ちっ、うぜぇ」


こんなところ、通らなきゃよかった。そう、後悔する彼の顔は無表情で微かに眉間に皺を寄せていたが、周りはクールで素敵、と囃し立てる。

周りが御機嫌になればなるほど不機嫌になる彼はふと、足を止めた。

ポケットのなかに手を突っ込むと、震えるスマートフォン。電話だ。

画面の文字を確認し、少し首を傾げた彼は、画面をタップし、耳に当てる。



「もしもし?」


『久しぶり。……随分と機嫌が悪そうだね』


「ああ、まあ……。で? なんのよう?」


そう歩く速度は緩めず彼が問うと、ああ、そうだった、と電話口の男は手元でガサガサと音を鳴らす。

数回紙を捲る音をさせると、あった、と電話口の男は声をだした。


『あのね、実は君に応援を願いたいんだけど。大丈夫?』


「なんの」


『今、久遠が行ってる高校のやつ』


「……くおん?……ああ、あいつか」


『知ってるの?』



彼は歩いたまま首を少し傾げた。