「折り鶴ってなんでこんなにきれいなんでしょうね」
千代は折ったばかりの折り鶴を掲げて言った。
「それは折り鶴だからだろ?」
優雪が返す。
「人間の折ったものだからな」
千代はえ?と思った。その声はいつもの三人の誰の声でもなかったからだ。
「あ、先生。勝手に使ってる」
優雪が言った。
千代がその視線の先を見ると優雪の向かいに十二代後半から三十代くらいに見える男の人が座っていた。
「先生、いつの間に?」
千代はびっくりして言った。
彼はこの学校の国語の小関みつき先生だ。
「いちゃあ悪いか?そういえば君、一年?増えた気がしてたけどまさか後輩を捕まえてたなんて」
小関先生は千代を見て言う。
「先生、捕まえたんじゃない!千代ちゃんは自分から来てくれたんだ」
優雪がすかさず言った。
「本当か?」
先生は疑わしそうだ。
「はい、私、優雪先輩の折り鶴に感激して教えてもらうために入れてもらったんです」
千代が得意げに言うと先生はふーんという顔で言った。
「変わった子だね」
「はい、思います」
千代は答えた。
「先生はどうしてここに?ちゃっかり折り紙折ってる」
「ここは先生のクラスなんだ。知らなかったかい?」
そういえば、この人、二年生の担任だったっけと千代は思い出した。
「ミッキー先生、これ汚い。混ぜないでください」
優雪が先生の折った折り鶴を押し返した。
鶴の折り鶴は受け入れるのに先輩にも受け入れられない折り鶴があるんだと千代は思った。
「ひどいな。先生、落ち込む」
先生が大げさにうなだれる。
ミッキー先生というのは小関先生のあだ名らしい。
「折り鶴への愛がないのがまるわかり!」
千代はそんなの分かるのかと感心した。
「先生、よくいつの間にかいるんだよ。ちゃっかり折り紙折ってるのもよくしてる。千代ちゃんも気にしないで。慣れて」
小蝶が説明する。
なるほど。
「先生、下手」
「お前が器用すぎるんだ」
優雪と先生は言い合い始めた。
先生は、この教室を私的に使う行為に突っ込まないのかと千代は突っ込みたかった。