桜の咲き誇る道路の左側の歩道を歩いて行くと前に学校の正門が見えた。千代は正門の前まで来ると立ち止まった。
 花丘千代。ふわりと肩の数センチ上まで下りている黒い髪。可愛らしい丸みのある黒い瞳。彼女はこの春この小泉中学校に入学する十二才の女の子だ。
 着なれていない大きめの制服の裾を握り立ち尽くす。今日は入学式。千代はこれからこの中学校の生徒になるのだ。
 これからどんな青春をするのか。期待に胸を膨らませながら正門を通った。正門を通ると右側に百メートルの長さはある大きな校庭が目に入った。
 (素敵!私、あそこで頑張りたい。きっと楽しい中学校生活になる)
千代は微笑みを浮かべて手を握りしめた。