「あ、」
彼が何か思い出したようだ。
「こんなことも聞いたことがありますよ。」
「はいはいはい...」
眠るくらいなら良いと、先生の話を聞いてみる。
「折り紙を一枚用意しまして」
彼は話を始める。
本当に用意したらいいのか、と一瞬戸惑う。
「この原稿用紙一枚いただいても?」
とっさに僕の横にあった原稿用紙を指差す。
「特別ですよ。」
「ありがとうございます。」
僕は先生に感謝しながら、ある事に気づく。
「あ、この用紙先生の名前が入っていますね。かっこいいなぁ。」
「紙飛行機を一機、折って下ださい。」
「どんなものでも?」
「ええ。かまいませんよ。まぁオーソドックスなものでいいでしょう。」
紙飛行機を折る。
「これは、すごい偶然ですが、あなたが今折った、その紙飛行機は、これまでに全世界で折られてきた紙飛行機の、丁度一億機目になります。」
「そんなの分からないじゃないですか。」
「ここは思い込んで下ださい話はここからだ。」
「ああ..これが、一億機目..それで?」
僕は目の前の紙飛行機をじっと見つめる。
「もし、どこかで、誰かが丁度2億機目の紙飛行機を折ることになるのは、およそ20年後になります。その頃、あなたはいくつですか?」
「ええと...もう50近いですね。」
「あなた、狙いを定めて折りますが、惜しくも二億一機目を折ることになったとしたら、こりゃどう思いますかね。」
「うーん..それは惜しかったじゃないんですか?せっかくなら切りのいい数の方が..」
「もうちょっと考えて」
先生はさらに追及する。
「たった一機、先に誰かが折らなければ。」
僕は真っ先に考えたことを言う。
「そう!それがあなたなのです!」
先生は興奮したようにそう言う。
「え?」
「あなたがその一機を折っていなければ、将来あなたが二億一機目を折る際、一機引いて丁度2億期目を折る事が出来たんだ!」
先生は満面のドヤ顔。
僕は自分の紙飛行機をじっと見つめる。
「まぁ言ってみればそうだけど、あまりにも机上の空論で、話が具体的な割に、つかみどころがないというか...」
「モヤモヤします?」
「しますね..」
「眠いですか?」
「眠いですむしろさっきより」