時刻は午前12時39分。
居酒屋でのバイトが長引き、十時に終わるはずが店を出たときには既に十二時を回っていた。
私が働くこの居酒屋が盛り上がるのは大抵週末だ。
しかし水曜日の今日。
週末に対して人は少ないはずなのだが、九時を回った途端にこれでもかというほど客がわんさかとやって来た。
当然人手が足りず、たまたまその場にいた私が使われた。
今日はいつにも増して奇妙な日だ。
疲れ切った身体に夏の夜の生温い風がまとわりつく。
汗ばんだ肌にべっとりと吸い付くように密着するカッターシャツがとても着心地が悪い。
この心地悪さから解放されるため、早く帰ってお風呂に入ろう。
あまり気は乗らないが路地裏の近道を通って帰る。
ここを通るときには必ず悪いことが起こる。
痴漢や酒で酔った者同士の夜の営みなど、今日は何が見られるのだろうか。
考えただけで吐き気がする。
以前に見た光景に身震いをしながらも真っ暗な道を進む。
「お嬢ちゃん、こんな時間に一人かい?」
ほら来た。
まぁこうなるのを覚悟でこの道を通ったわけだが、現実になると面倒臭いものだ。
相手は二十歳過ぎぐらいの男が三人。
無視して通り過ぎようとすれば一人の男に左腕を引かれ、残った二人に道を遮られる。
「無視せずに俺等と遊ぼうよ〜。」
そう耳元で囁かれる。
クソが付くほど気持ち悪い。
「私、疲れてるんで。」と言って腕を振り払おうとしたが、かなり強く握られているのか離れない。
「楽しいことなら疲れなんて関係ないでしょ?」
私の腕を掴んでいた手はいつの間にか肩に回され、古びた建物に誘導される。
不意に太股に違和感を感じたかと思えば、一人の男の手が私の制服のスカートの中に入っていく。
「汚ぇ。」
ついに限界が来てしまい、私の太股に触れていた男の手にある数本の指の骨を素手で折る。
あまりの痛さに男は鈍い悲鳴を上げた。
「くっそ…この野郎!!」
想像もしなかったであろう展開に恐れを感じたのか、私の肩に手を回していた男に頬を殴られる。
「そ…それなりの賠償してもらうぞ!!」
そう言いながら三人の男はズボンのベルトを外し始めた。
人前でよくそんなことが出来るもんだ。
これはもうアレを使うしかないか。
今日は休みなんだけどなぁ、"裏社会"では。
ドスンッ…という鈍い音と共に三人の男が倒れる。
負けじと立ち上がろうとする男達に、念のためにポケットの中に隠し持っていた折りたたみ式の小型ナイフを投げる。
一人は右肩、一人は右腕、一人は左足の太股。
「てんめぇっ…、何しやがる!?け、警察呼ぶぞ!!」
これもお決まりの台詞だ。
警察なんて呼んでも無駄なこと。
私は勝ち誇ったように言う。
「呼んでもいいですけど、取り合ってくれますかねぇ。」
その前にお前等殺すけど。
更にポケットからナイフを取り出し、次はどこを的にしようか考える。
もういっそ殺しちゃいますかね?
「な、なにもんだよお前…。」
「あっ、知りたいですか?」
彼等の知りたがっていることは極秘の情報だが、どうせもうすぐ死ぬ人間だ。
言っても広がりはしないだろう。
死の世界では分からないけど、なんて。
「知りたいなら教えて差し上げます。私は裏社会にある彼の有名な企業、KITBの不浄人抹消係三班所属、白空燐と申します。」
お見知りおきを、なんて言っても知った時点でもう死ぬけど。
彼等は痛みに耐えながらも、意味が分からないとでも言いたそうな顔をしている。
「私の仕事は貴方々のような穢れた人間をこの世から抹消することです。」
つか今日休みなんですけどぉー。
なんて脳内で文句を言いつつ笑顔を向ける。
「は?…ま、抹消?」
「そう、まっしょー。」
これ以上の説明をしても彼等の脳では理解は困難だろうと判断し、手に持っていたナイフを彼等に向かって投げた。
ナイフは見事に額に命中し、彼等は間抜けな顔で地面に倒れる。
今日は裏では休みのはずなのだが、こういうときに限って現れないでほしい。
鞄の中から携帯を取り出し、ある人物に電話を掛ける。
「あ、オカマさん?」
『オカマじゃない!』
「あ、うん。死体回収頼みまーす。」
電話の相手は、KITBの死体回収係所属のオカマ異、柳美翠麗さん。
私の頼み事に対して何か言おうとしていたが、一方的に電話を切る。
おそらく『なぜ休みの日に仕事をしているのか?』などというものだろう。
時刻は午前1時24分。
穢らわしい男共に時間を取られてしまった。
「私の睡眠時間とその他諸々返せよ。」と言っても、もう死んでるからいいか。
時刻は午前12時39分。
居酒屋でのバイトが長引き、十時に終わるはずが店を出たときには既に十二時を回っていた。
私が働くこの居酒屋が盛り上がるのは大抵週末だ。
しかし水曜日の今日。
週末に対して人は少ないはずなのだが、九時を回った途端にこれでもかというほど客がわんさかとやって来た。
当然人手が足りず、たまたまその場にいた私が使われた。
今日はいつにも増して奇妙な日だ。
疲れ切った身体に夏の夜の生温い風がまとわりつく。
汗ばんだ肌にべっとりと吸い付くように密着するカッターシャツがとても着心地が悪い。
この心地悪さから解放されるため、早く帰ってお風呂に入ろう。
あまり気は乗らないが路地裏の近道を通って帰る。
ここを通るときには必ず悪いことが起こる。
痴漢や酒で酔った者同士の夜の営みなど、今日は何が見られるのだろうか。
考えただけで吐き気がする。
以前に見た光景に身震いをしながらも真っ暗な道を進む。
「お嬢ちゃん、こんな時間に一人かい?」
ほら来た。
まぁこうなるのを覚悟でこの道を通ったわけだが、現実になると面倒臭いものだ。
相手は二十歳過ぎぐらいの男が三人。
無視して通り過ぎようとすれば一人の男に左腕を引かれ、残った二人に道を遮られる。
「無視せずに俺等と遊ぼうよ〜。」
そう耳元で囁かれる。
クソが付くほど気持ち悪い。
「私、疲れてるんで。」と言って腕を振り払おうとしたが、かなり強く握られているのか離れない。
「楽しいことなら疲れなんて関係ないでしょ?」
私の腕を掴んでいた手はいつの間にか肩に回され、古びた建物に誘導される。
不意に太股に違和感を感じたかと思えば、一人の男の手が私の制服のスカートの中に入っていく。
「汚ぇ。」
ついに限界が来てしまい、私の太股に触れていた男の手にある数本の指の骨を素手で折る。
あまりの痛さに男は鈍い悲鳴を上げた。
「くっそ…この野郎!!」
想像もしなかったであろう展開に恐れを感じたのか、私の肩に手を回していた男に頬を殴られる。
「そ…それなりの賠償してもらうぞ!!」
そう言いながら三人の男はズボンのベルトを外し始めた。
人前でよくそんなことが出来るもんだ。
これはもうアレを使うしかないか。
今日は休みなんだけどなぁ、"裏社会"では。
ドスンッ…という鈍い音と共に三人の男が倒れる。
負けじと立ち上がろうとする男達に、念のためにポケットの中に隠し持っていた折りたたみ式の小型ナイフを投げる。
一人は右肩、一人は右腕、一人は左足の太股。
「てんめぇっ…、何しやがる!?け、警察呼ぶぞ!!」
これもお決まりの台詞だ。
警察なんて呼んでも無駄なこと。
私は勝ち誇ったように言う。
「呼んでもいいですけど、取り合ってくれますかねぇ。」
その前にお前等殺すけど。
更にポケットからナイフを取り出し、次はどこを的にしようか考える。
もういっそ殺しちゃいますかね?
「な、なにもんだよお前…。」
「あっ、知りたいですか?」
彼等の知りたがっていることは極秘の情報だが、どうせもうすぐ死ぬ人間だ。
言っても広がりはしないだろう。
死の世界では分からないけど、なんて。
「知りたいなら教えて差し上げます。私は裏社会にある彼の有名な企業、KITBの不浄人抹消係三班所属、白空燐と申します。」
お見知りおきを、なんて言っても知った時点でもう死ぬけど。
彼等は痛みに耐えながらも、意味が分からないとでも言いたそうな顔をしている。
「私の仕事は貴方々のような穢れた人間をこの世から抹消することです。」
つか今日休みなんですけどぉー。
なんて脳内で文句を言いつつ笑顔を向ける。
「は?…ま、抹消?」
「そう、まっしょー。」
これ以上の説明をしても彼等の脳では理解は困難だろうと判断し、手に持っていたナイフを彼等に向かって投げた。
ナイフは見事に額に命中し、彼等は間抜けな顔で地面に倒れる。
今日は裏では休みのはずなのだが、こういうときに限って現れないでほしい。
鞄の中から携帯を取り出し、ある人物に電話を掛ける。
「あ、オカマさん?」
『オカマじゃない!』
「あ、うん。死体回収頼みまーす。」
電話の相手は、KITBの死体回収係所属のオカマ異、柳美翠麗さん。
私の頼み事に対して何か言おうとしていたが、一方的に電話を切る。
おそらく『なぜ休みの日に仕事をしているのか?』などというものだろう。
時刻は午前1時24分。
穢らわしい男共に時間を取られてしまった。
「私の睡眠時間とその他諸々返せよ。」と言っても、もう死んでるからいいか。
