追い風が、背中を押してくれている気がした。
やっと花村先生の家に着くと、足がガクガクと震えだした。
その震える足で、一段一段錆びた階段を上がって行く。
花村先生の部屋の前に立ち、深呼吸をして、呼び鈴に手を掛けたとき
ガチャリ――と、ドアが開いた。
「…な…かがみ……せんせ」
花村先生は少し驚いた後、すぐに気まずそうに俯いた。
「…花村先生……この前は…失礼しました。
わたしの素性は、先日話した通りです。
けど…わたしは、花村先生が好きです」
言い終わったとき、暖かい腕が、わたしの身体を包み込んだ。
「俺も……好きだ。秋葉」
「…せんせ…」
「…剛司って…呼べよ」
「た……たけ……し…好き」
わたしはうまく剛司の顔を見て言うことが出来ず
俯きがちにぼそぼそと言った。
「あぁ……もぉ…可愛すぎる。
なぁ…秋葉」
「はい?」
「キスしよう」
「え…?」
「返事は?」
生徒を見るような目をした先生に、わたしは勝てなかった。
「ハイ…」


