お母さんの作ってくれるお弁当は心がこもっていてとてもおいしかった。友達からもうらやましがられるレパートリーの数が内心自慢だった。ダメなことをしたら叱ってくれた。本気で心配してくれているのだと愛を感じた。

 普段何もしてやれないからと言い、ゆっくり休みたいはずの連休、年に二回は必ず旅行に連れていってくれたお父さん。学校の友達に渡すためのお土産もたくさん買ってくれた。おいしいお店に連れていってくれた。勉強を見てくれ丁寧に教えてくれた。

 いつもそこにあったかけがえのない時間。学校で友達と楽しめたのも、ピアノに打ち込めたのも、お父さんとお母さんが愛してくれたから。


 お母さんのメモ帳を右手で力一杯握りしめる。とめどなく涙が溢れた。

 今度は絶対守ってみせる。

 秀星(しゅうせい)との未来だけじゃない。お父さんとお母さんが別れなくて済むよう動くんだ!


 意識が過去へ沈んでいく。そして、決意をさらに深いものにした。










 暗夜(終)