理不尽なこのセカイで



だから、僕も何も言わずに後ろを着いて歩く。少しして僕と君が辿り着いたのは屋上。かしゃん、と音を立ててフェンスに背中を預けた君は、僕に向かって嗤った。


「……理不尽だって、思わねえの?」


主語は、なかった。けれど言いたいことは分かったから、僕は答える。


「思うよ、当たり前じゃん」

「じゃあどうして何もしない?」


今度は僕ではなく、君が間髪入れずに問いかけてくる。一瞬答えに窮し、だが答えを探し出して、僕はその言葉を紡ぐ。


「何かしたって変わらないよ。それに、……僕は独りでも構わない」


次は君が黙る番だった。僕は君の隣に立ち、フェンスに指を絡める。屋上から下を見下ろしてみると、そこはアスファルト。それを見ながら、僕は君に問う。


「――――君、は?」


その表情は見えない。僕は君の表情を見るために、ちらりと横に目を向ける。君は瞳を閉じていて、唇には自嘲するような笑み。


「……理不尽だと、思うよ。思わないわけがねえ。寧ろお前がそう思ってねえことが不思議なくらい」

「別に、理不尽だと思っていないわけじゃない。理不尽なのは認めるよ。でも、それがいじめってものだろう?」


君が更に笑みを深めた。僕はまた視線を前に戻す。蒼く澄み渡る空は憎たらしいくらいに綺麗だ。


「お前みたいにそうやって割り切れるほど、俺は強くねえよ」

「僕だって強いってわけじゃ、」


再び君に視線を向けた。同時に、がしゃんとフェンスが大きな音を立てる。え、と思えば君は。


「な、にして……!」


止めようという考えが思い浮かぶ前に、君はフェンスの向こう側へ降り立つ。フェンス越しに向かい合う、僕と君。真っ直ぐに君を見つめれば、君は歪んだ笑みを見せる。


「……後悔、しないの?」


問えば、こくりと頷く君。僕は目を伏せてそう、と呟き、それからまた視線を合わせる。意外にも君は真っ直ぐな瞳をしていて、――――僕は止める意味も理由もないと悟った。


元から、僕は他人に興味など持っていなかったのだ。君は僕に似ていると思ったからで、けれど君がそうしたいと言うのなら、僕に止める権利はない。


君は一度だけ、僕に何か言おうとしてやめる。それから口をきゅっと結んで、