毎日、君はお昼になると僕のところに来てパンを食べてからみんなのところへ戻って馬鹿騒ぎをする。前はうるさいとしか思っていなかったけれど、君と話すようになってからそう思うことも少なくなってきた。君のお陰で、僕も少なからず変わってきているらしい。




平和だった。初めの頃は、初めの頃だけは。




――――それから、約半年。




いつの間にか、周りの人はみんな僕から離れていくようになっていた。それは僕だけではなく、君の周りからもであった。皮肉なことに、ムードメーカーだった君の周りからも、みんなは離れていった。


僕と君は、二人で過ごすようになった。君はそれでも以前と変わらず、ムードメーカーとしてのそれは健在だった。だから、二人で話すといっても主に君が話しているだけである。


――――けれど。


いくら君が明るく振る舞っているように見せても、強がりに過ぎず。君が奥に隠してある黒いものなんて僕にはお見通しで。


それに君が気付いているのかは分からないが、別に君それを教えようとは思わないので言っていない。


それでも君は隠そうとしているみたいだから、きっと僕が気付いていることには気付いていないのだろう。僕は君のそんなところが、嫌いでない。僕も――昔は、そんなものだった。


まだ、僕が何も知らなかった頃。この世界の小ささと黒さと理不尽さを知る前。知る前はまだ、僕も君と同じような場所にいた。


僕とてクラスのムードメーカーだったのである。


それがいつの間にかこうやっていじめられる立場にいるのだから、人生分かったもんじゃない。それが楽しいという人もいるかもしれないが、僕は少なくともそうではない。不幸だとも思わないだけである。


人間、生きているうちにいくつかは谷があったほうがいい。だから、周りから見て谷を経験している僕はある意味恵まれているのかもしれない。


いくらいじめが全国的に多くなったとは言え、やはり実際にこんなに長くいじめられるのは多くはいないだろう。いたらいたで、それは問題である。では、僕は問題なのだろうか。