初めにいじめられていたのは、僕の方だった。普通に生きていきたかった僕でも初めはクラスのムードメーカーで、けれどそれがかえっていけなかったのかもしれない。気付いたら、僕はクラス中から無視をされていた。


だけど僕は特に気にしなかった。暴力を振るわれるよりはましだと思っていたからだった。それから僕はいつも本を読むようになっていた。そうしていれば、大抵のことは無視していられるから。




――――年が変わり、四月。




クラス替えをしても、周りの反応はあまり変わらなかった。けれど、一つだけ変化が訪れた。


「なあ、名前なんていうんだ?」


君が、話しかけてくれたから。


初めは、君もただの好奇心で話しかけていると思っていた。そんな人たちと友達になんてなりたくないと思っていた僕は、初めの一ヶ月くらいは君のことを相手にしなかった。同情とか好奇心ならいらない。僕は独りでいいと、考えていたから。


けれど、一ヶ月経っても離れようとせず根気よく付きまとってくる君に、僕は諦め。一ヶ月と一週間が過ぎた頃、自然と僕と君は話すようになっていた。


「なあ、何でいつも独りなんだ?」

「……楽だから」

「そうか? そうでもないと思うけどなー」


本気で分からないというような顔で首を捻る君に、僕は嗤う。きっと君には分からない、人の中心にいていつも笑っているような君には。僕と君は正反対だ。


僕と一緒に居つつも、君は変わらずクラスのムードメーカーだった。周りも僕と君が一緒にいるときは表立った動きはして来なかった。だから君がいじめに気付いていたのかはわからないけれど、たとえ気付いていても君の対応は変わらない気がする。


とは言え、いじめがなくなったわけではなく。たまに上履きが消えたり、無視は日常茶飯事であるから、君が僕の生活に加わっただけで他は変わらないのだろうと思う。僕は生活に変化を求めているわけではないから、君がいようといまいと構わないのだが。