翌日、憂鬱な気分で学校に向かった。


彼が転向してきてからユリが登校を全くしなくなったなんて事になれば彼女が自分はリリーであると認めたも同然。

行くしかなかったのだ。


教室に入ると、まだアルは来ていないようだ。女子は誰が一番に挨拶できるかで競争でもするつもりなのか妙にソワソワしている。

そしてそんな女子たちはユリを見つけるとツカツカとやってきた。


話はなんとなくわかるけれど、敢えて聞いてやろう。ユリは半ばやけくそだった。

「……何かな?」

「あんた、何様なの?
他の男どもはともかくアル君にまで手ぇ出してたわけ?そもそもどこで知り合ったのよ!?」

リーダー格の女子が代表して答えた。

あまりにも想定内の解答過ぎて笑いがこみ上げてくる。隠そうとするけどそれは表情に出てしまったらしく、

「何笑ってんの!?」

と怒鳴られた。
教室に剣呑な雰囲気が漂い、まずったなぁと思ったけどここは冷静に。

「ごめんなさい。
別に何かあるわけじゃないよ。誰かと間違えたんじゃないかしら?ほら。私の名前って百合だから、英語にするとリリー。彼はリリーという女の人を探している見たいだしね?」

「じゃぁ、ホントに何も無いわけね?」

「えぇ。何も無い。」


あまりにも無理のある説明だとは思ったけれど、彼女達は納得してくれたらしい。単純でよかった…笑

教室の雰囲気が少しずつ和んできた頃、

「みんな〜good morning〜♪」

と言いながらアルが登校してきた。
主に女子だけれどクラスの半数以上が彼の周りにワラワラと集まって口々に「おはよう」と言っている。

チラチラとアルが私を見ているのには気がついた。けど、人が多くて私のほうに来ることは叶わなかったらしく、一限目のチャイムとともに席におとなしくついていた。


一時間目は数学。

数学はこんなんでも学年1位なため楽しょー。暇で仕方が無い。

だからこれからどうしようかと考えてた。
正直、私がリリーではない、という話にどこまでアルが騙されてくれるかにかかっていて、それはおそらく直ぐに気づかれる。

もう5年以上も会っていないけれど、私のことを探していたみたいだし癖とか顔とか名前以外に変わったところなんて大してないのだから気づかれて当然だとも思ってる。

とはいえ5年前はもっとしゃべる活発なタイプだったし髪もこんな黒い髪じゃなかったし…

うーん微妙だ。