氷上のプリンセスは



アルは来シーズンに使う曲の振りの復習で、

私はというと、


「ジャンプまだどのくらい飛べる?」


ということで一通りのジャンプを飛ぶことになった。

と言っても、一回転二回転までやるのはめんどくさいし体力的にも辛いので全部三回転。


最初は難易度が一番低いトウループから。

そのあと、サルコウ、ループ、フリップ、ルッツとそれぞれ三回転で飛んでいく。


「ホント、ブランクがあるとは思えないジャンプだなぁ。
ラストアクセルだけど、トリプルは飛べないだろ?」


確かにパパの知ってる私は飛べないけどね。

なんて思いながらニヤッと笑って見せて助走に入り、


そのまま飛んだ。



着地もブレない。
我ながらうまく飛べたと思う。


何をって?


もちろんトリプルアクセル。



驚いて口を開けたままでいるパパの横に戻ると、アルも隣にやってきた。



「リリー絶対練習してたよね!?」



私の肩を掴むとグラグラ前後に揺らすアル。


ジャンプは得意だけど飛んだ直後にそんだけ揺らされるのはさすがにきつい。



「揺らさないで!!」



「練習してたの認めたらやめてあげる。」



でましたブラックアル。



笑ってるけど妙に目が据わってて怖い。

「アル、もっと揺らせ!!」



加勢しないでよパパ!!


思いっきり言いたいけどそんな状況ではない。とりあえず首が痛い!!



「〜〜〜〜っわかった!!
認める!!認めるから!!」


「じゃあ改めて聞くよ?
練習したの?」


揺らすのは止まったけれどその手は私の肩に置かれたまま。

「そうだってば!」


ジーッと私の目を見てくるアルの目を私も見つめ返してしっかりと答えると、私の方から手が離れた。


「そっか〜じゃなかったらトリプルアクセルなんて高難易度のジャンプ飛べるようになるわけないよね!!」


「そーかそーか〜パパは嬉しいぞ!!」


「えっ⁉︎ちょっと2人ともなんでいきなりそんな満面の笑みになるのよ⁉︎」


「そりゃあーだって、ねぇー?」


何が「ねぇー?」なのっ⁉︎

二人は気持ち悪いくらいの笑顔でニコニコしている。

アルに至ってはキラキラ〜という光線が出ているっ。。


「お前たち!!練習終わったら焼肉食べに行くぞ!!」


「やった!!コーチの奢り?」


「もちろんだ!」



未だ満面の笑みのまま「焼肉焼肉〜♪」
と楽しそうに言っているお二人さん。

特にパパはいい年して何やってんだか。



「そう。いってらっしゃい。」


この後は家に帰るつもりだったからそう言った。


ただそれだけ。


「何言ってるんだ?お前もくるに決まってるだろう?」


「ボクもコーチと二人で焼肉なんてやだよ。」


「お前何気に失礼なこと言ったな。
奢らないぞ⁉︎」



「ごめんなさい全然いいです。」


笑顔であることだけでなく異様にテンションの高い二人。

ホントに行きたくないし今アル自身がコーチと二人でも全然一緒でいいって言った気がしなくもない。


「ほら、アルも二人でいいって言ってるんだし、いってらっしゃーい。」


もう一回いってらっしゃーいって言ってみた。


「だめだよ!!ほらコーチのせいで…
いいからリリーも行くの!」



「俺のせいにするな。
とにかくリリーも参加!!
というか勝手に帰られる前に行こう。
ってことで練習終わりっ!

着替えたら出口集合な。
アルはリリーを見張ること。」



「了解っ!!

ほらっ、早く行くよリリー!」


「えっ⁉︎行くなんて一言も言ってないけど⁉︎」


私の手を掴むとスイスイそのまま滑ってリンクの外に出ようとするアル。


下手にこっちが止めようものならお互い転びかねないため止めるに止められないこの状況。。


無事リンク外に出たはいいけど掴まれた手首はそのままでズカズカと更衣室の方に歩いていく。


そして更衣室の前に来ると、私たちから向かって右に男子、左に女子の更衣室。

いきなりグイッと手を引かれて、彼が開けた女子更衣室へ。

しかも私が入った後ろから迷うことなく彼も入ってきた。



「ちょっとなに考えてんの⁉︎
ここ女子更衣室!!アンタは男でしょ⁉︎
いつから女になったの!!」


「間違えてないしワザとだし。
それにボクはれっきとした男だよ。」


「じゃあなんでこっち来たのよ!!」


「リリーを逃さないため?」