氷上のプリンセスは





「そんな冷たい事言わないでくれよ!
じゃ、とりあえず始めるよ。」



スケート靴のカバーを外してスーッとリンクを滑っていくパパにアルも続いた。


仕方なく私もそれに続く。



私もアルも軽い柔軟しかしていなかったからまずはアップから。


何週間グルグルと普通に滑ってたまにジャンプをしてみたり。


「なんで2人とも私のことそんなに見てるわけ?」


気がつくと、私と同じくアップをしていたアルは動きを止めておりパパの横に並んで私のことをジーッと見ていた。


「……滑りたくないとか言いつつちゃんと練習してたでしょ?」


「そこまで安定したジャンプも飛べてるんだ、筋トレも欠かしたことないんじゃないか?」



驚きつつも真剣な目で見てくる2人。
プロの目は誤魔化せない、ってのは本当だなぁ。


けどやってたって言ったら言ったでめんどくさそうだし。


「んなわけないでしょ。
私がジャンプ得意だったの忘れた?」


「でもあんなに安定して飛ぶのはそれなりに筋力もないといけないからホントに何もやってなかったら無理だぞ。」


痛いところつかないでよパパ!!


ここは嘘を突き通すことにする。


「飛べたんだから飛べるんでしょ。
ほら、アルもアップ続けなって。」


「でもさ…」


強引に話を打ち切ろうとする私にアルはまだ食いついてきた。

私たちの通う学校は、世界的にも有名な楠木グループが経営をしているため設備はそこらの大学よりもいい。

進学率もさる事ながらスポーツ強豪校としても有名なのだ。

そんなわけでうちの高校、楠木学園には敷地内にスケートリンクもある。


近くに系列は違うけれど大学もあるので、そこの大学生や学園のスケート選手を目指す生徒が朝や放課後に使っている。


前にも言ったかもしれないけれど私のパパは学園の理事長、つまりは楠木グループの社長と仲がいい。おかげでいろいろ融通が効くため、授業をサボる時なんかに使っていたわけ。


基本、サボる時は寝てることが多いけど雨の日なんかは外も屋上も使えないし、空き教室にはたまに先生が来るからあんまり居られない。


冬は寒いし夏は暑くて外にいられないなんてこともあるから足は自然とリンクに向かっていた、というのもあるけどね。



「あーーーもういいでしょ!?
今日ちゃんと来てるんだし、これ以上しつこく聞いてくるなら帰るけど?」


「……わかった。」



2人とも腑に落ちなそうな顔をしつつも私が帰るのだけは避けたかったらしい。


アルは再びアップに戻り、パパももう一度軽く滑り出した。


それから20分ほどたった頃、それぞれ体が温まったところでアップを終えて練習に入ることになった。