柴じいの事を誰かが噂した






若い頃は恐かったらしい


柔道五段なんだって


昔は戦場で戦っていたんだって


恋人がいたそうだ


とても綺麗な人なんだって


結婚を約束した運命の人らしい





僕は少し興味が沸いた




戦争を知らない僕に
祖母がよく話してくれた


話の後、
最後は決まって僕を連れて
仏壇に手を合わせた。


そしてこう言うんだ



『もう二度と…もう二度と…』







そんな事を思い出しながら

僕は柴じいに駆け寄った