1. 今は昔…刀の時代と呼ばれ、その名の通り、刀無しで何ができる?何もできないだろ!と言う言葉が流行る時代だ。
しかし、刀を持つのは男のみ。この時代の女は、皆、男の操り人形だった…。
「父上!由美は、父上の後を継ぐ立派な女性になり等ございます!」
「はぁ〜?由美が俺の跡継ぎぃ〜?無理だよ。」
そんな時代の中、刀を手にしようとしているバカ女が一人いる。彼女の名は、大李 由美。この時代の神とも呼ばれる刀使い、大李 誠の一人娘である。神…大李 誠は、自分の刀を血に染めることなく、今まで約一千五百万人の悪党を倒してきた。まさに神業。刀を使いながらも、血は一切出させない。そんな彼は、悪党潰しの神として有名だった。
「それは…やはり女だからですか…?」
由美は、この家の玉座に座る父を睨みつける。
「女は男のおまけじゃないんです!特にこの由美は、父上のご活躍を生まれた時からずっとお側で見ておりました。私なら、父上の跡継ぎを…」
と、由美は言いかけの言葉を飲み込んだ。父の瞳が、由美の次の言葉を許さないかのごとく、鋭く光っていたからだ。
「お前は…俺の刀を誰よりも間近で見てきた…そう言ったよな?」
「はい。」
「ーじゃあ、なんで俺の使ってる刀の技が、今だに理解できないんだ?」
「それは…父上の技が速すぎて…」
「お前は俺の何を見てきた?お前ごときの小娘に、何ができる?」
「ッッー」
ー私…が今も父上の技を見抜けていないのは事実…。
誠の技をこの世で見抜いた者は…由美の母であり、誠の既婚者であり、そして、元悪党でもあった、大李 愛ただ一人だけだった。
「由美…お前に刀を握る資格なんてない。」
そう一言言うと、誠は、玉座を後にして、屋敷の奥深くに姿を消した。
「わた…しは…、わ…たしは……」
由美は首にかかっているペンダント、今亡き 母の形見「龍の血で作られた宝石」を強く握りしめた。
と、次の瞬間 ー 強い風が髪を揺らし、由美の近くの壁に、一本の、紙が結ばれた矢が刺さっていた。
「?」
由美は、矢から紙を外し、広げる。
そこには…

我が娘、答えは東の寺にあり。
そこで修行を積むことで、結果によれば考えなくもない。


「父上…。」
由美は、近くにある部屋から一本の刀を掴み、持ってくる。
「必ず、私は父上の跡継ぎになる‼︎」
大李 由美。
十年後、彼女は日本一の刀使いになる。
そして、愛する人の前で殺される。
今、彼女は、ただひたすら夢を追いかけている。
そんな過酷な運命が待っているとは知らずに…。