「やっべ………俺、本気で惚れたわ」


すると、有谷君は片手で口を覆い、私を切なそうに見つめる。

私は、それに目を見張った。

有谷君、今なんて……。

私の耳がおかしくなってなければ、惚れたって聞こえた。


「アンタ、我妻先輩なんて止めて、俺と付き合おうよ」

「っ!?」


とんでもない事を言い出す有谷君に、私は絶句する。

そして、そっと私の手を持ち上げた。


「気に入ったわ、アンタの事」

「そ、それは無理!私には清人が……」

「大丈夫、すぐに俺しか考えられなくするから、ね?先輩」


そう言ってあきらかな作り笑いを張り付ける有谷君に、私は言葉を失う。


どうやら、私はとんでもない人に、好かれてしまったらしい…。

戸惑うまま、私は有谷君を見つめ返す事しか出来なかった。