「あーあ、昨日はあんなに晴れてたのに…」

どんよりとした空を見つめ、深々と息をつく

まぁ、今日の始業式に何かしら思い入れがあるわけではないが、やはり高校生活1日目に天気が崩れると気分も曇るというものだ

手短に歯を磨いて顔を洗い、ささっと髪を整える
新しい制服を着た自分はなんだか少し大人に見えて、自然と顔に笑みが溢れた

やっと…高校生…!!

じわじわと実感が湧いてくる
前日に用意したリュックを背負って玄関に駆ける

「行ってきます!」

足早に家を出て勢い良く自転車に乗った

一つ目の信号でふと空腹感に気付き、朝ごはんを食べ忘れたことに気付いた。
まぁ始業式は10時半に終わるらしいし我慢できるか…

信号が青になり、また自転車を漕ぎ始める。しばらくすると同じ制服の人をちらちらと見かけるようになり、あの中に今後仲良くするかもしれない子がいると思うと胸に緊張が走った

学校につくと指定の上履きに履き替え、教室へと向かう

自分でいうのもなんだが人と接するのは上手いほうで、今まで友達に不自由したことはなかった
僕が喋れば誰もが笑顔になり人が集まってくる。この学校でも、上手くいくだろう
そう思い自分のクラスへと足を踏み入れた

辺りを一通り見渡したがまだあまり人はきていなかった
早すぎたか?
とりあえず黒板に貼られてある紙で自分の席を確認し、席につく

「よっ!お前名前なんてーの?」

口元から八重歯を覗かせたいかにも好青年が話しかけてきた。

「あ、どうも、菅原涼太っす」
「おけ、涼太な!俺葉山っつーから下の名前で呼んで!」

いや下の名前まだ聞いてないぞ?!
だがここで聞くと男が廃るってもんだ…

「オッケーダニエル」
「ぶはははは!なんだよダニエルって!じゃあお前マークな!」

どうしよう、安易な発想から生まれたジョークのせいで僕のあだ名がマークになってしまう

「いや、あの、今のは…

キーンコーンカーンコーン

「じゃ、またなマーク!」
「あ!ちょ!」

この後先生の口から様々な注意事項や今後の高校生活についての話が出たが、僕の頭の中はどうやってあのあだ名をやめさせるかでいっぱいだった