「正気なの?
おかしいよ渉ちゃん。
あたし達再会してまだ数時間しか経ってないんだよ?
結婚って……そんな簡単なものじゃないでしょ?」

「うん、簡単じゃ、無い。わかってるよこれでも。
最初に言ったろ?俺の菜々に対する気持ちは進行形だって……
実際向こうの生活はキツかった。言葉だってそうだけど、考えがまるきり違う。でも、此処で箔を付けて日本へ戻る、で、菜々に会いに行ってプロポーズするって目標作って頑張ったんだ」

中々頷かないから、濱田は言うつもりは無かったと言って頭を掻いた。

「菜々だって悪いんだぞ?こんな未練タラタラな男と付き合ってたんだから、しかないって諦めろよ」

濱田は菜々の腰をグッと引き寄せた。


「キス、していい?」

えっ?菜々は驚いて濱田を見上げた。
既に間近に迫る濱田の顔。

「ねぇ、していい?」

甘い声に、菜々の鼓動は早くなる。
あたしだって渉ちゃんに触れたいよ、でも……理性が菜々を押しとどめる。

「渉ちゃ…んっ……」

言葉を発したと同時にそれは重なり合った。
軽く触れただけの温もりだった。

「やっぱ、ダメ?」

おでこをくっ付け、甘えた濱田の声、菜々の殻を破るのには充分だった。

「ダメ、じゃ、ないよ……」

それが合図かのように、弾かれるように、2人は互いの唇を求めた。