「…………」
えっ?と……そんな話、したっけ……
菜々は居酒屋での会話を思い返す。

「悪いとは思ったけど、俺、時々もっちゃんと連絡取ってたんだ。菜々の情報得る為に」

濱田はそう言って、舌を出す。

「えっ?」
思わず驚きが口を吐く。

「出産の祝いしてなくて、一時帰国した時新居へ行ったんだ。その時からかなぁ」

濱田は悪びれる事なく打ち明ける。

「しっ、信じらんない、瑠璃何にも言わなかった」

「いう訳ないよ、情報提供はもっちゃんからだもん」
はぁあ?何それ……

「まぁ、利害が一致したからな」

どういう事なのか追及する菜々に濱田は本人に聞けとしか言わない。

「そんな事より、さっきの話の続き」

自分から脱線してら話の腰を折った濱田に呆れる菜々の目にもう涙は無い。

濱田は菜々の手を取り立ち上がらせ、対面させる。

「戻って来いよ」

菜々は答えない。いや、答えられない。
自分から逃げ出しておいて、今更元の鞘に収まるのは虫が良すぎる。

「菜々は俺が嫌い?」
「えっ?嫌いだなんて……」
菜々は首を左右に振って否定した。

「だったら戻って来てよ」
「何で?…だってあたしは渉ちゃんを妬んで羨んで逃げ出したんだよ?元鞘なんてあり得ない」

「俺の事、好き?」

静かに濱田は尋ねる。

菜々は少し間を置いて、小さく頷いた。
「でも!それは戻る理由にはならないから」



「だったら……菜々、俺と結婚して?」

「っ!!!!」