「っじ、じゃあ!洗面所の歯ブラシ、何よあれ!」

あちゃーといった表情の濱田は頭を抱えた。

「見たのかよ、菜々ちゃんのエッチ「茶化さないで!私は真面目に聞いてるの!!!」

菜々は此の期に及んでヘラヘラする濱田にイラついた。

「…俺の歯ブラシ一本じゃ、可哀想だろ?」

はぁ?訳分かんない。

「じゃあ、食器は?
何で処分してないのよ!」
「おいおい、家宅捜査でもしたのかよ」
「だからっ、茶化さないでって言ったでしょ?」
「ん〜、そこにスペースがあったから?」

から?って、私に聞くんじゃ無いわよっと、菜々は濱田とは逆方向を向いた。


「とりあえず、その化粧落とすのが先だろ?」
「だから!渉ちゃんは昔っからそう、何でも知ってますって、悟ってますって!
そういうとこがいやだったの!」

菜々はそう叫んだ後、はっと我にかえる。

濱田は顔色ひとつ変えず、優しい眼差しを菜々に向ける。

「菜々?」

そう優しく呼ぶ濱田の声に、菜々は堰を切ったように泣き出してしまった。


「もうやだぁ、こんなあたし…」

声を上げしゃくり上げる菜々、濱田はそんな彼女の傍に腰を下ろし、そっと頭を撫でる。

それが合図かの如く、更に涙が溢れ、思わず濱田にしがみ付いた。