菜々は、みんなとは少し離れた場所から、ほろ酔い気分で、級友を傍観していた。


佐久間は丁度一年前に結婚した。
日下部は官庁勤めで、2つ下の旦那がいる。
瑠璃は専業主婦で3人(?)の子持ち。
他のみんなも、それぞれの世界で生きている。
家庭に収まる人、バリバリ働く人、仕事も家庭も頑張る人……


幸せって、一体何なんだろうか。
すっきりしない頭で考えた。



あの頃、大学4年の時、就活が上手く行かず、最悪就職浪人も覚悟した。

この世の終わりかとさえ思った。

あれから6年、あれだけ嘆き悲しんだ菜々ではあるが、今はどうだろう、あんなに苦労して入社した企業で、あの時の事は忘却の彼方に消え去り、時には不満を漏らす。

27歳の春、未だ結婚どころか相手すらいない。

私は周りからどんな風に見られているのだろう、菜々はふと、みんなを見ていて、そんな事を考えた。



「…な、菜々?行くぞ?」

いきなり手首を掴まれ、酔いも手伝ってか前にツンのめる。

おっと、濱田は蹴つまずく菜々を優しく支える。

「濱田君!
二次会行こうよ!
もう、何で?何で白鳥さんな訳?」

移動しようと先を歩く中から、悲鳴が上がる。天地である。
駄々っ子の様に道路に座り込み、しゃくり上げて泣く酔っ払いの頭を佐久間が撫でる。

「はまだぁ!」

そして頑張れよと右手の親指を立てる。

「任しとけ」

佐久間がしたように、濱田は親指を立てる。