「はいはぁい、そろそろお開きの時間。
最後に田原先生から締めの挨拶頂きまぁす」

佐久間が先生を促し、今迄を振り返ったり、これからの未来を語ったり、とりあえずは5年後元気で再会しようと、田原は締めた。



「なぁ、菜々、この後二人で飲み直さないか?」

店を出ようとした菜々の首元を後ろから腕を回す。

「えっ?」

誰?
このスーツ、濱田のものである。

「何か話足りない。なぁ菜々、飲み直そうぜ」


至近距離から聞こえる濱田の声。
菜々は、自身の顔が紅潮していくのが解る。
アルコールが入り、フワフワした、とても気持ちのいい状態で聞く濱田の声は、菜々の心の片隅をくすぐるのに十分だった。

「ちょっ、はっ、濱田君?」

「………オッケーするまで離さないけど」

そう言って、菜々に回した腕に少し力を込める。

「うっ、やだっ、苦しいから、はっ離して…」

「だからぁ、頷くまで離さないって」

楽しそうに濱田は言う。

「わっ、解った……解ったから…」

緩んだ首元をを両手で押さえ、振り向いて濱田を睨みつける菜々。

「やっぱ無しはダメだかんな!」


飲み直すって、どこで?
二人で?
菜々は楽しそうに笑う濱田の笑顔を複雑な気持ちで見つめた。





「余り羽目を外すなよ」

田原は店が呼んだタクシーの窓を開け、釘をさす。

「了解です、先生も、気を付けて帰って下さいね」

日下部がタクシーに駆け寄る。