「ないない、ってか、予定すら皆無だな」

「………またまたぁ〜」

濱田のその一言に、また、トクンと鼓動が高鳴る菜々。

胸の高鳴りを、必死に押さえ込みながら、菜々は平静を装い、からかう様な一言しか、発せない。




そうこうしていると、日下部が次回の同窓会の告知の用紙を持って来た。

「田原っちは、いつでもいいって。とりあえず大体の都合書いといて」


それだけ言うと、去って行った。


「5年後かぁ、私、その頃何してんのかなぁ」

ペンをクルクル回しながら、大雑把に4つに分割されたスペースに、其々記名があった。


「32かぁ、結婚してんじゃないか、普通に考えて」

濱田は菜々から告知用紙を取り上げて、記名された内容を見ている。


「………そ、そうだよね、あっ、私まだ書いてないっ」

菜々は濱田から用紙を取り返し、【秋くらい】と表された欄に名前を書く。

「あっ、菜々、俺もそこに書いといて」

えっ?………

濱田から、菜々と、名前を呼び捨てにされ、一瞬ペンを持つ手が止まる。

「………やっ、やだよ、自分で書きなよ」

「いいじゃん、書いといて」

…………



さっきから、アルコールのせいではない、鼓動の早まりを、菜々は気付かない振りをしてきた。

でも……やっぱり、ダメだ。