頭の上から聞こえて来る声に反応して、菜々はトクンと鼓動が早くなるのを感じながら、後ろを振り返った。

「天地はどうしたんだよ」

菜々の隣に腰を下ろす濱田に、佐久間は濱田が居たであろう方向に首を向けた。

「ウザいから潰した」


………


菜々は、天地の姿を探し、店内を見渡すと、この店の唯一の座敷スペース、とはいえ6畳にも満たないようなスペースに横たわっていた。


「マジか、……お前、相変わらず容赦ないなぁ、天地に対して」

「はん、興味無いもんは仕方ないだろ?
なぁ、白鳥」

いきなり話を振られて、菜々は箸で摘まんでいた若鶏の唐揚げをテーブルに落としてしまった。

「ぷっ、何焦ってんだよ」

「あっ、焦ってなんか、ないわよ!」

佐久間がクスクス笑うから、菜々はムキになる。

「ほら、携番教えてよ」

菜々が落とした唐揚げをヒョイと指で拾って口に放り込む濱田、菜々は、そんな濱田の仕草がやけに自然で、やるせなかった。


「やだよ、今は教えない、その内気が向いたらね」

あの頃、私はいつも彼に守られていた。どんな私も受け入れてくれた。菜々は、テーブルの上に視線を落とし、当時の事を少し思い返していた。