『菜々ちゃん、また遊んでね』
瑠璃を迎えに、副島親子がやって来た。今年から年中さんになる息子の貴大は愛くるしい笑顔を菜々に見せる。


「ごめんね、やっぱこのお腹だから、旦那が心配してさ?先に抜けるけど、菜々?ちゃんと楽しむんだよ」

瑠璃は、ちゃんとを強調しながら、濱田をチラリと見る。

「また、家に来て」

「ばいばぁい」

貴大は瑠璃に手を引かれ、空いている手をヒラヒラさせながら、店を出て行った。


「坂本はいい母親だなぁ、あの子の柔らかい笑顔見ていたら解るわかる。ん〜素晴らしい」

田原は、うんうんと首を縦に振る。




「白鳥、お前結婚は?いい人いないのか?」

会が始まってもうすぐ2時間。
最初に座ったテーブルは、最早留めてはいなく、それぞれ気の合った旧友と親睦を深めていた。


「何よ、急に……
悪かったわね、結婚して無くて!」
それ、モラハラだからねっ、と、佐久間に毒吐きながら菜々はテーブルに並ぶ、殆ど手が付けられていない料理に箸を伸ばす。

「ばぁか、心配してんだろ?
……お前ら、あれから……どうなんだよ」

佐久間も、筍の天ぷらを頬張りながら、チラッと濱田の居る方を見た。

「………
だから、それ、モラハラだから……」


当時、佐久間と濱田は親友で、事ある毎に互いをからかっていた。


「いいもんだぞ?家族って。
てか、お前、携帯の番号、教えとけ」

佐久間は胸ポケットからスマホを取り出した。

「やだよ、モラハラオヤジには教えませぇん!」

菜々は体を半分捻りながら断固拒否の姿勢を示した。


「俺にも教えてよ、番号」