Гーそして彼女は二度と戻ることはありませんでした。」

姉様の一人がため息をつくように話し終えた。

その場で見て来たのかと思わせるような、感情を込めた話し方をされると、次の話をせがみづらくなってしまう。

「もう寝なさい、明日は早く起こすわよ。」

先程の感情豊かな話しぶりはどこに行ったのか、姉様は無表情になる。

「まだ眠くないんだもの…。」

甘えた口調で返してみるも、姉様は首を横にふり、また明日ね、と私におやすみのキスをして寝床に入っていった。

誰に訴えるわけでもなく、頬を膨らませる。

まだ眠くない、まだ眠れない、もう少し起きていたい。

お話を聞いていたい。

何度も聞いたお話も、初めて聞くお話も、どれも私の胸を踊らせる。

人魚と人間が出会うお話。


恋に落ちて

情を交わして

涙を流す


恋に落ちた人魚は、いや、恋以外の情をもって人間に歩み寄った人魚も結局は辛い最後を迎えてしまう。

まるで、最初から決められてるかのように。

悲劇を重ね続けた結果、今や人魚達は人間嫌いになっている。

人間全てが悪だと決めつけて。

自分の寝床に入り、今日聞かせてもらったお話を反芻する。

信じている人達に裏切られる。

それはどれだけ辛いのだろうかと。