イジワル上司に焦らされてます

 



それが、幸か不幸か……

どちらかといえば、今の私にとっては不幸中の幸いと言っていいかもしれない。


だって今の現状、どんな顔して不破さんの隣で仕事をしたらいいかわからないし……


何より、不破さんの顔を、まともに見れる自信もない。



「それにしても、不破がいないと静かだな」

「クライアントから、電話の掛かってくる回数も減りますからねぇ」

「それも言ったら、調子に乗るな、絶対」

「ハハッ、間違いないですねぇ」



チクチクと、不破さんのいない時間を刻む針の音。


今回の出張は、まるで見計らったかのようなタイミングだった。


あの日、エレベーターを社長と2人で降りて会社に戻って。


もう仕事に集中することも、不破さんの方を見ることもできなかった私は、不破さんが会社を出る直前まで、今回の出張のことをスッカリさっぱり忘れていた。



“ 明日からいないけど、何かあったら携帯に連絡入れて ”



帰り際、突然そんなことを言った不破さんを前に、思わず固まったまま彼の顔を凝視してしまったのは不破さんの “ 明日からいないけど ” という一言だけが、やけに鮮明に耳に残ったから。


え、明日からいないって、どういうこと?

まさか……だから、さっきエレベーターの中で、あんなことをしたの?……なんて。


冷静になれていたら、出張のことをすぐに思い出せただろうに。


その時の私は動揺のせいで不破さんの言葉をそのままに受け取り、行き場のない不安に襲われた。