ぼんやりと、そんなことを思い浮かべながら、その笑顔に繋がる企画書に手を伸ばした。
隔離された、お決まりの打ち合わせスペースは、窓が大きく開かれているお陰で息苦しさは感じない。
舞い込んできた風が、命を吹きこむように始まりのページをパラパラと優しく揺らせば、あの日の不破さんの声が聞こえたような気がした。
─── 『日々に追われて、どんなに仕事に疲れても。結局、デザイナーを辞められない。癖になるんだよ、この仕事』
「私は……デザイナーという立場なので。カフェに来てくれたお客様が喜んでくれるものはもちろん……クライアントである辰野さんや、カジタ商事の皆さんも笑顔になってくれるものを作りたいな、と思ってます」
「…………え、」
「私も、人の笑顔を作る仕事がしたいんです」
ふわり、と。再び舞い込んだ風に声を乗せて微笑めば、流れた長い髪が私の頬を優しく撫でた。
言ってから、今の発言は恥ずかしかったかも、と、少しの後悔。
だから思わず一瞬、目を伏せて。息を吐く。
「─── 、」
けれど、次に視線を上げた時には何故か辰野さんが身体を固くして私を見つめていて、思わず私まで動きを止めて彼を見つめてしまった。



