「……Cafe Plus+(カフェ・プラス)、ですか」

「はい、ロゴ案はこちらになります」



カフェのコンセプト決定までに、そう時間は掛からなかった。

最近では、辰野さんとの打ち合わせにはお決まりの場所となりつつあるカジタ商事の打ち合わせスペース。

4人がけの机の上に広げられた、数枚のB4サイズの紙の中に並んだロゴデザインを見て、辰野さんが興味深そうに顎に手を添えた。



「スッキリとしたデザインですが、パッと見た時に健康的なイメージを印象づけるようなロゴデザインにまとめました」



デザインに目を通している辰野さんに向けて言い添えれば「なるほど」という相槌が返ってくる。

カフェのターゲットは、20代前半からの女性。

そこで私が提案したコンセプトは、" ちょっと一息つきながら、心と身体の癒やされるひとときを提供するカフェ " だった。


辰野さんと初めて打ち合わせをした時に彼が言っていた、" お客様が心地良く休める場所 " という意向を汲みつつ、それにプラスアルファという形で設定したコンセプトだ。


─── 魚心あれば水心、っていうだろ。

最初に向こうの意向を汲んでこっちに好意を持って貰えば、その後やりやすい。


そんな、どこかの誰かさんのアドバイス通り。

最初にコンセプトを説明した時、辰野さんはとても喜んでくれて。すぐさま上に話を通したかと思ったら、あっという間に承諾まで漕ぎ着けた。