「最初に言った通り、僕は日下部さんと仕事ができるのが、嬉しいんです。今までメール上でしかやり取りなかったけど、メールもいつも迅速かつ丁寧だから、きっとご本人はとても律儀で真面目な方なんだろうなって思ってて」
「……ありがとう、ございます」
「それに噂では、とても綺麗な方だと聞いてたので。そうなると、俺の中では律儀で真面目なメールをくれる美人だってことになって、必然的に会ってみたいと思ってしまうのは男の性(さが)ですよね」
「え、えぇと……それ、は……」
突然仕事以外の話を饒舌に話しだした辰野さんに、思わず尻込みしてしまう。
その上、なんだか口調もさっきより大分砕けている気がするんだけど……
「実際お会いしてみて、予想以上に素敵な方で本当に驚きました。そして、それと同時に日下部さんのことを、もっと知りたくなったんです。……近付きたいと言うと、あからさま過ぎでしょうか」
「……それは、仕事抜きに私に何かを期待していらっしゃる、ということでしょうか」
「いえ。もちろん、デザイナーとしての日下部さんと仕事ができるのも楽しみです。
でも……本音では一人の男として、日下部さんのことを知れたらいいなとも思ってます」
「── っ、」
「すみません。俺、こういうの隠すの苦手なので……だから、言葉のまま受け取って頂いて大丈夫です」
言いながら、とても綺麗に笑った彼のその言葉は…………きっと、嘘。
辰野さんなら、仕事をしていく上で自分の感情の一つを隠すくらい、実に造作もないことだろう。
「俺、不器用なんです。だから、これからも突然、こうやって直球を投げてしまうこともあるかと思いますが、よろしくお願いします」
─── あなたが、不器用?……ご冗談を。
" 嘘も方便 " 。
嘘はいけないことだけど、よい結果を得る為に時には嘘も必要だと、陰り一つ無い彼の笑顔が言っているように思えた。



