「梶田社長も、今回は日下部(くさかべ)さん辺りが適任なんじゃないかなぁって言ってたよ。カジタビル自体も、リニューアルオープン後のターゲットは女性だし、年代的にも丁度いい」



社長がいうところのカジタビルとは、 " 梶田社長 " というやり手の社長が1年ほど前に買ったビルで、半年後に総合ファッションビルとしてのリニューアルオープンが決まっていた。


ターゲットは若い10代の女の子から、平日は主婦層までと幅広い。


今、私が勤めるデザインオフィスからも程近く、更には最寄り駅からも歩いて5分という中々の好立地にあるビルだ。



「まぁ、日下部くんも良くやってくれてるし、それなりに場数も踏んできた。それらを総合的に考えても、この話には日下部くんが適任かと僕も思う」



優しく緩められた目に浮かぶのは、信頼。

そんな社長の様子と言葉に、私は思わず心の中でガッツポーズをしてしまった。