んー……どうしたものか。
つい、唇にペンを当て、流れた髪を片手で後ろへ跳ね上げ企画書と睨めっこをしていれば、不意に視線を感じて顔を上げた。
「─── 、」
と。絡み合う視線と視線。
思わずキョトンとして首を傾げれば、辰野さんが何故かくすぐったそうに笑ってみせる。
「……正直に言ってしまうと、今回も不破さんが担当なのかなって思ってたんです。だから、社長から担当が日下部さんだと聞いた時は驚きました」
「え……」
「ほら、こういう新しいことをやる時は、大抵、不破さんが担当するじゃないですか」
言われてみて、改めて、辰野さんはカフェの担当者が私だったことを信じられずにいたのだと思い至った。
それは、そうだ。
最近では何か新しいことを、という仕事が舞い込んでくると担当になるのは大抵、不破さんで。
それは名指しで指名されることがほとんどで、それだけ不破さんはクライアントから信頼が厚いということを示してる。
だからこそ、不破さんが来ると思っていて私が来たら……拍子抜けも、するだろう。
「す、すみません、ご希望の不破ではなく、担当が私で……」
「あ、そうじゃなくて。日下部さんで不満だとかそういう気持ちは全くなくて……寧ろ、逆です」
「……え、」
首元までキッチリと締められたネクタイ。
骨張った男性らしい手に顎を乗せた辰野さんが、今日一番の綺麗な笑顔を見せる。
その笑顔は酷く魅惑的で、爽やかな好青年といった印象の辰野さんのイメージを一変させるには十分で、思わず息をつまらせた。



