「日下部さんと、お会い出来て嬉しいです。噂通り本当にお綺麗ですね。というか、綺麗すぎて驚きました」


「いえ、そんな……でも、ありがとうございます。こちらこそ、お会い出来て嬉しいです」



─── 自分を見て微笑む相手に、つい警戒心を抱いてしまうのは、28年生きてきた中でのある種の教訓のようなものだった。


自分が人より人目を引く容姿であることは嫌と言うほど自覚しているし、今更猫を被って大袈裟に否定するのも白々しい。


学生時代は知らぬ間に同性に疎まれたり、あらぬ噂をたてられたり。


何もしていないのに派手な見た目の先輩に呼び出されて凄まれたり、周りからジロジロと好奇の目で見られることも多々あった。


……学生時代は、それなりにモテたし。


" 蘭ちゃんは、本当に綺麗な顔してるね "

" 日下部さんって、本当に美人だよね "


有り難いお褒めの言葉に笑顔を貼り付け、上手に「ありがとう」と返せるようになったのは、いつ頃だった?


もう、そんなことすら思い出せないけど。


それでも異性に好かれることや、外見を褒められて嫌な気はしないのは、こんなんでも一応自分が、女だからなんだろう。