イジワル上司に焦らされてます

 


朝のポストイットに然り……最近じゃ、不破さんの機嫌が良いか悪いかも、キーボードを叩く音でなんとなくわかる。


ついこの間なんて、不破さんに言われなくても不破さんが飲みたい物までわかってしまい、流石にそんな自分に引いて、不破さんが嫌いな飲み物をわざと買って渡した。



「確かに、それもあるけど逆に向こうがイメージをしっかり固めてくる場合だってあるだろ」


「……それは、そうですけど。だとしたらやっぱり、一度向こうの意向を聞いてから考えた方が無駄もないし効率的ですか?」


「そりゃそうだろ。そもそも、クライアントは向こうなんだから、どうやったって向こうの意向を無視はできない」



ビルの無機質な灯りが、不破さんの輪郭を優しくなぞる。


だけど、こんな風に同じ時間を過ごしても。


これが恋にならないのは相手が直属の上司であり、尊敬する一(イチ)デザイナーであるからに違いない。


不破さんは、どんな時でも仕事とプライベートを混同しない人だ。


それは当たり前のことかもしれないけれど、私は、そんな彼の姿勢を心から尊敬しているし、自分だってそうでありたいと心から思ってる。