イジワル上司に焦らされてます

 


「私、いつかお客さんを笑顔にできるようなデザイナーになるのが夢なんです」



キッパリと、そう言い切った彼女の真っ直ぐな目に一瞬見惚れて、言葉を失った。

上司の俺を前に、気を遣って言っているようにも見えない。

彼女が口先だけで人のご機嫌取りをするような人間ではないのも、この一ヶ月で学んでいた。

夢なんて、こんなに堂々と、しかも上司を前に言えるものだろうか。

それだけ彼女が強く、その夢を胸に掲げているということか。

だけどそれは危なっかしくもあり、それでいて目が眩むほど眩しくもある。

少しだけ忘れかけていた心。どんなに仕事に忙殺されようが、忘れてはいけない気持ちだった。



「……楽しい、か」

「はい! できれば早く一人前になって……不破さんみたいに、企画から携われるようになれたらいいなと思います」

「だからって、無理すりゃいいってもんじゃない」

「無理はしません。でも、無理をするくらいの気持ちで、頑張りたいとは思ってます」



ただ、無駄に綺麗な女だと思ってた。

だけど今、彼女の言葉と表情を見て、その夢を叶えてやりたいと強く思ってしまった。


─── できれば、俺の手で。

彼女を、彼女が望むような一人前のデザイナーになれるように導いてやりたかった。