「多分……名前で呼ばれたら、もっとお前のこと離せなくなる」

「そんなこと言われたら……私きっと、その名前を呼ぶたびに甘えちゃいますよ……?」



緩やかに弧を描いた唇。耳元でからかうようにそう言えば、彼はやっぱり意地悪に笑う。



「お前なら、甘えてもイイよ?」



今日も不敵に笑う、その笑顔が大嫌い。



「それで? 俺に、どうしてほしい」



聞かなくてもわかるくせに、どこまでいってもズルイ人。

─── でも降参なんて、するもんか。



「……とりあえず、これからも私の隣にいてください」



呆れるくらい、恋も仕事も。意地っ張りでいさせて。