「……なんか、今日一日で不破さんのこと信用できなくなりました。嘘吐くの、上手すぎて」

「心外だな。嘘なんて一度も吐いてない。ただ、言わなかっただけだ」

「屁理屈ですよ……そもそも、なんなんですか、その無駄な決めごと。別にクライアントが友達でもいいじゃないですか」



それ以上、深く考えるのも嫌になり、脱力してシートに身体を預ければ、やっぱり不破さんは苦笑いを零すだけ。

今までのことが辰野さんが言っていた " 面白い話 " だとすれば、辰野さんも相当良い性格をしている。



「……ツレだからってことに、甘えたくないんだよ」

「……え?」

「あくまで仕事は、対等にやりたい。何より、変な甘えはお互いの為にも良くないしな」



窓の外を流れる景色は、いつの間にか夜に染まっていて、光るネオンがガラスに反射しては消えていく。



「それに、クライアントが知り合いっていうのも、時と場合によっては良し悪しだ」



不破さんの言うことも一理ある。

仕事をする上で、知り合いということが有利に働いたり、何かの時に大目に見てもらえるということもあるだろう。

けれど、やり難くなる場合もあるのだ。

例えばお金のやり取りにしかり、細かい調整を頼み難くなったり。

知り合いということで無理難題を押し付けられることもあるし、何より知り合いであるという情が、逆に自分の仕事を公平に見てもらえない理由にも成り得る。