「フェアじゃないと思ったんだよ」



ビルの影から出た私たちが向かったのは、駅前の駐車場だった。

そこに停められていた不破さんの愛車に乗り込み、今まで辰野さんとの関係を黙っていたことを改めて問い詰めれば、彼は悪びれもせずにそんなことを言う。



「フェアじゃないって意味がわかりません。友達なら友達だって、せめて……私にだけは言ってくれたら良かったのに」



ジロリと睨めばハンドルに手を乗せたまま前を向いている彼は、どこか面倒くさそうで視線をこちらへと向けてくれない。



「逆に、そんなこと言われたら仕事し難かったろ。そもそも、俺とアイツの繋がりを知ったところで、お前はそれを利用するようなタイプでもないし話す必要もないかと思ったんだよ」



ハァ、と、いよいよ溜め息まで吐かれて、喉の奥に溜まっていた文句を飲み込んでしまった。

確かに不破さんの言う通り、辰野さんが不破さんの友達だと知っていたら私は仕事がし難くなっていたかもしれない。

……特に、途中からは不破さんとの関係が変わってしまったし。

たとえ仕事でも、彼の友人と仕事をすると思うと余計な見栄を張ってしまっていたかも。



「そうだとしても……もう少し早く教えてくれたら良かったのに。そうすれば、辰野さんからの誘いも冗談だって割りきれて、もっと気楽に断れました」

「だから、それについては悪かったと思ってるよ。アイツは昔から、俺をからかうのが趣味みたいなもんで……。まぁ今回は、かなり悪質だったけどな」