相変わらず騒がしい店内で、私たちは互いを探り合うように見つめ合っていた。
余裕たっぷりの笑みを浮かべている辰野さんと、眉根を寄せて黙りこくっている私。
……辰野さんの真意は、やっぱり掴めない。
数回瞬きを繰り返したあと、ゆっくりと息を吐く。
そうして私は辰野さんに声を掛けられる以前のように、彼から視線を外して前を向いた。
「……結構です」
「え?」
「確かに、魅力的なお話ではありますけど。でも、もしも私が知らない彼がいるのだとしたら、それは辰野さんからではなく彼自身から教えてもらいます」
キッパリと言い切れば、辰野さんが隣で目を見開く。
「でも、本人は日下部さんには言わないかもしれませんよ? もしかしたら、一生隠し続けるかも」
ふと、腕時計に視線を落とせば、ディナータイムのピーク時間を過ぎていて、一日の速さに驚いてしまう。
その中でも今日一日、ここで人の流れを見ていて気が付いたこともあった。
例えば、お客様には女性に紛れて男性客も予想以上に多いこと。
それはファミリーで来られた旦那さんだったりお父さんだったり、カップルで来ている彼であったり、いわゆるお連れ様というお客様。
そんな男性向けのメニューが少ないことは、男性からすると逆に居心地が悪かっただろう。
休日特有のことかもしれないけれど、それもまた頭にいれて、新しい企画提案へと繋げたい。



