「一時はどうなるかと思いましたが、無事に今日を迎えることができて本当に良かったです」



そろそろ陽も落ちようとしている頃。

賑わう店内の片隅でお客様の様子を眺めていれば、不意に隣に立った辰野さんが柔らかな声でそう言った。

一段とスマートに決められたブラックのビジネススーツ。首からはスタッフであることを示すプレートが下げられている。

今日は、Cafe 『 h i t o + t o k i 』のオープン日だ。

カフェだけではなく、『 h i t o + t o k i 』の入ったファッションビルのオープンに併せてプロモーションを打ってきただけのことはあり、店内はどこも人で溢れかえっていた。

幸い天気も味方してくれて、外は見事なお出かけ日和。

土曜日の今日はassortは休みなのだけれど、私は h i t o + t o k i のオープンを見届けるべく、現場に出向いている。



「本当に、良かったです。お客様も、こんなに笑顔で……。携わってきたみんなの想いが、報われたような気がします」



溢れる笑顔と活気に包まれた店内。

思わず笑みを零せば、辰野さんもまた嬉しそうに笑った。