「もしも、テラス席が良ければそちらへどうぞ。天気は良いけど少し空気が冷たいから、その籠の中にある膝掛けを使ってね」
「ありがとうございます!」
ニッコリと微笑んでくれたマダムにお礼を伝えてから足早にテラスへと出た。
ウッドデッキのテラスには三席ほど席が用意されていて、入り口と同じように綺麗に手入れのされた花がそこかしこに並べられている。
オーシャンビューなんてものじゃない。
視界いっぱいに広がる空と海の青、下から吹き上げる風の音だけが、私の心を埋め尽くした。
「随分、気に入ってくれたようで良かったよ」
そんな私を見守るように眺めていた不破さんが、一番近くの席に腰を下ろしてから小さく笑った。
慌てて我に返った私は振り向くと、彼同様に笑顔を見せる。
「連れて来てくれて、ありがとうございます! 多分、今まで来たカフェの中で一番素敵です。素敵過ぎて、誰にも教えたくないくらい」
興奮を抑え切れずにそう言えば、やっぱり不破さんは楽しそうに笑った。
潮風と、木々の擦れる音と鳥の声。
BGMなんてなくても、ただ、自然が作ってくれた温かな世界が、どうしようもなく私の心を躍らせる。



