「じゃあ、別の店行くか」
「……え?」
「ちょっと山の中だけど、多分、お前なら絶対に気に入る店」
「……ホントですか?」
「まぁ、俺も結構気に入ってる店」
そう言うと、楽しそうに口角を上げた不破さんは、私の返事も聞かずに車のギアを入れて走り出した。
落ち込んでいた気分が一気に浮上して、返された携帯電話を膝の上でギュッと握った。
相変わらず、ドキドキと高鳴る鼓動。不破さんが気に入っているというお店に連れて行ってもらえることが、こんなにも嬉しいなんて。
窓の外を流れる景色。
良く晴れた空を眺めながら、案外、厄日でもなかったかも……なんて、現金な私は隣の運転手に身を預けながら笑みを零した。
* * *
「……風の隠れ家」
駅から車を走らせること約15分。着いた場所は山の上にある、小さな一軒家だった。
けれど、どこからどう見ても一軒家のそこには " Cafe 風の隠れ家 " というプレートがついている。
綺麗に手入れされた庭先の奥、花に囲まれた通路の先にはアンティーク調のドアがある。
ここに着くまでは、一体どこにカフェなんてあるのかと疑ってしまうくらいの山と坂道だったけど。
目の前の、童話に出てくるような外観のお家がカフェだと言われてしまえば、心を躍らさずにはいられない。



