イジワル上司に焦らされてます

 


「…………ここです」



駅前のロータリーで長く停まっている訳にもいかず、赤くなった顔を誤魔化すように携帯電話の画面を不破さんへと向けたけれど、あまり効果はないだろう。

私の照れ隠しに気付きながらも、何も言わずに携帯電話を覗き込んだ不破さんには、きっと何もかもお見通しだ。

と。私が差し出した携帯の画面を視線でなぞった不破さんが、突然訝しげに目を細めて息を吐く。



「そこ、今日は祝日で閉まってたぞ」

「え!? 嘘っ」

「それと、その下の駅前のカフェ。ここに来るまでに前を通ったけど、めちゃくちゃ並んでた」



相変わらず、厄日続きだ。

いっそのこと、今日はお祓いとかに行ってきた方がいい?



「どうしよう……今日は、この二つのどっちかに行く気満々だったから、それ以外のところは考えてませんでした……」



思わず項垂れると、不破さんはハンドルに両腕を乗せてフロントガラスから空を仰いだ。

雲一つない晴天。出掛けるには持って来いの一日だ。

だけど、このままだと行き先が決まらない。ホントに、どうしよう……。

せっかく気分転換かつ、何か新しいものを……と思って来たのに、これじゃあなんの意味もない。

寧ろ、貴重な時間を無駄にしてしまうことになる。本来なら、こんな風にゆっくりしている時間はないのだ。

挙げ句の果てには、突発だけど不破さんとの初めてのデートも台無しになるなんて……