イジワル上司に焦らされてます

 




「さっきまで、この近くの海でサーフィンしてたんだよ」



電話での予告通り、10分後に現れた不破さんはショートボードを積んだ愛車に乗って私の前に現れた。

ほんのりと鼻を掠める、潮の香り。

Vネックの黒いロングTシャツに細身のジーンズというラフな格好が、見慣れなくてつい何度も盗み見てしまう。

シンプルなのに何故か異様に様になるから不思議だ。ジャケットを着ていないせいで、いつもよりもくっきりと見える引き締まった身体のラインが、無駄に色気を漂わせていた。



「それで、目的地は?」

「不破さんって……女心とか無視ですね」



けれど、そんな風にドキドキしているのは、いつだって私だけなのだ。

私をさっさと車に乗せて、初めて仕事以外で休日に会うというのに少しの余韻にも浸らない彼は、極めていつも通り。

私だけなの? これが初めてのデートかもしれないなんて、ドキドキしているのは。



「お前って、時々、無駄に女子だな」

「……時々じゃなくて、いつも女子だし無駄とか失礼ですけど」

「あー、っていうか、突然、可愛くなるなってことな」

「……はい?」

「今みたいなヤツ。拗ねてる感じが、無駄に可愛い」